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この記事が役立つ人
- 書籍『六人の嘘つきな大学生』が気になっている方
- 人間関係の複雑さや心理描写を楽しみたい方
- 就活や採用活動に興味がある、または経験した方
- 伏線回収やどんでん返しのあるミステリーを求める方
先日、SNSでこの作品のレビューが目に入りました。「ラストの展開に驚かされた」「伏線が秀逸」というコメントが多数寄せられていて、つい気になってしまいました。さらに、仕事で採用に関わることもある身として、「就活」というテーマがどのように描かれているのか知りたくなり、この本を手に取りました。
著者:浅倉 秋成
職業:小説家
著者情報:1989年生まれの日本の小説家で、千葉県出身。代表作は『六人の嘘つきな大学生』『教室が、ひとりになるまで』『俺ではない炎上』など。「伏線の狙撃手」と称される巧妙なストーリー展開が特徴。
目次
心の中で揺れる「正しさ」と「嘘」の狭間
この作品は、就職活動中の大学生たちが最後の選考で巻き起こす人間模様を描いています。特に印象的だったのが、作中で繰り返される「月の裏側は見えない」というフレーズ。これって、人間関係にも通じるテーマですよね。人って、どうしても目の前の一面だけで他人を判断しがちだし、嘘をつく理由も、実はそこにあるのかもしれないなと。
たとえば、ある場面では、学生の一人が車椅子の駐車スペースを使ったことが責められるんですが、実際にはその裏に隠された事情があったりして。表から見える行動だけでは、その人の本当の姿はわからないんだなあと、改めて感じさせられました。
さらに、「就活」というシステム自体も鋭く切り取られています。実際、厚生労働省のデータによると、2023年度の新卒就職率は97.3%と高水準ですが、その背景には選考過程での激しい競争があり、心の負担を抱える学生も多いそうです。この作品を読むと、そんな現実が見えてくる気がします。
嘘をつく理由とその行方
物語の中で最も心を動かされたのは、嘘が嘘だけでは終わらないところでした。一見、計算ずくでつかれた嘘でも、それが結果的に他人を救ったり、新しい視点をもたらしたりすることがあるんですよね。それに、登場人物たちが嘘をつく理由も、ただの保身や欲望だけじゃなくて、もっと深い部分に根差している。そこがまた、物語の厚みを感じさせるんです。
心理学的には、嘘をつく行為には「自己防衛」「社会的適応」「他者配慮」という3つの主要な動機があるとされています(出典: APA, 2021)。この作品に登場する学生たちも、それぞれがこの動機に沿った形で嘘をついていることがわかります。読んでいるうちに、彼らの行動に共感する場面も多かったですね。
二転三転する展開の妙
ストーリーが進むにつれて、登場人物たちの印象が次々に変わっていくんです。最初は正義感が強いと思っていた人物が、実は腹黒い一面を持っていたり。その逆に、悪意のある行動に見えたものが、実は深い優しさから来ていたりして。
特に最後の方では、犯人が誰なのかというサスペンスが加速しつつも、真相が明らかになるにつれて「ああ、この人もこんな事情があったんだ」と腑に落ちる瞬間が何度もありました。その中で、就活というシステムがいかに人を追い詰めるかという現実がリアルに浮かび上がってきます。
読後感とおすすめポイント
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読み終えたあと、胸に残ったのは「人は一面だけで判断できない」という普遍的なテーマでした。月の裏側を見ることはできなくても、想像しようとすることはできる。その大切さを、この作品は教えてくれます。
また、ストーリーのテンポが良くて、次の展開が気になってどんどんページをめくってしまう、そんな読書体験をしたい人にはぴったりです。就活中の学生はもちろん、社会人にもぜひ読んでほしい一冊。人間関係における新しい視点を得られること、間違いなしです。
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